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今回の一連のVISAに関する騒動に思うこと

アメリカで生活する上で、Visaの話は避けて通れない。あっけなく取れてしまうF Visaを手に意気揚々とアメリカに入国するも、Fでできることの少なさに愕然とする(バイトもできない!)、という経験をした人も多いのではないだろうか。そんなただでさえ不安定なVisaの状況に加えて、最近の大統領令、そしてThe Student and Exchange Visitor Program (SEVP)が発表したオンラインで受講する学生にVisaを発給しないという方針を受けて、心穏やかではない人も多いと思う。 それなりに色々な困難があったアメリカ生活を乗り越えてきている身として、僕がいま何を考えているか、を簡単にまとめてみた。 1.悲しいかな、移民政策は変わりつつあるのではないか 留学生の多くは、非移民Visaでアメリカに入国する。これはアメリカに移民する意思がない、というものである(従って面接ではアメリカに長くいたいと思います、などと口が裂けても言ってはならない)。そこから移民の意思を持つことができるH-1bなどのVisaに切り替わり、そしてグリーンカードに進み、場合によっては米国の国籍を取ることになる。 人道的な意味合いのAsylumを除けば、アメリカの移民政策は一貫していると僕は思っていて、それはアメリカの国益になる人間に対して滞在を認める、というものである。従って、アメリカの大学に学費を払う留学生、アメリカで不足しているスキルを提供できる人材などに対してVisaを発給し、アメリカの国をより豊かにしてもらおうというわけだ。僕もこういった移民政策の結果として、アメリカに現在住み、そして働いている。 ただ、今回のSEVPの方針転換は、こういった従来の方針とは全く異なると僕は思う。F Visaを使っている生徒はアメリカで働けないのだから、雇用を奪うことはない。つまり、オンラインであろうがなかろうが、多くのアメリカ人の生活に影響はないのである。さらに言えば、こういった留学生がアメリカで生活をしなくなる分、アメリカの大学周辺の街で使用されるお金が減ることになる。一部には留学生が減ることで大学に進学できるアメリカ人が増える、という言説があるが、オンラインで授業をする学校を狙い撃ちにしてVisaを発給しないと言っているだけなのだから、Enrollmentに大きな影響が出るとも思えない。 ...

MBA後も勉強は終わらない(むしろ本番である)

MBAを卒業してとても長い時間が経つ。MBA後に産まれた自分の子供を見ていると、あの二年間が本当は夢だったのではないかと思うこともある。自由に時間を使え、好きなことに好きなだけ首を突っ込んで、世界中からきた同級生と議論を戦わせる。いい大人になって、制約条件のない自由な二年間というのは、非常に贅沢な時間だった、と僕は思う。 一方で、MBAを取得する、というのは本当にスタートに過ぎない。僕の経験だと、残念ながらMBAで学んだ”知識”そのものをそのまま適用できる機会というのは余りない。勿論、場面場面で役立つことはある。このマーケティングの施策にはこういった視点が抜けている、ファイナンスから出てきた数字のこの前提がおかしい、自分の製品のストラテジーを学んだフレームワークで考え直してみる ー こういった”疑問をもつきっかけ”はMBAで得た授業で手繰り寄せることができる。しかしながら、MBAを卒業したばかりの若者は、そこから目の前にある問題を自分の力で解決していかねばならない。これはMBAで学ぶ経営判断とは全く別の次元の、極めて実務的な能力が必要になる。 アメリカの採用は、MBA採用も含めて、かなりFunctional Skillを重視する傾向があると僕は思っている。Functional Skill、というのは、そのポジションで活躍するために必要になる具体的なスキルのことで、例えば、プロダクトマネージャーであれば、5年以上に亘るプロダクトマネジメントかソフトウェアエンジニアリングの経験、や、SQLやTableauなどの分析ツールが使えること、や、Machine Learningの知識及び実務での経験、といったものがこれにあたる。採用側としても、MBA生のポテンシャル、及び、将来的に会社でマネジメントポジションとして活躍してくれる期待を持ちつつも、実際問題として入社してからしばらく全く稼働しないような人間を取るわけにいかず、従って、どうしてもこういったFunctional Skillが持っていることを前提に、採用を進めていくことになる。 このFunctional Skill重視の採用が何を意味するのか、と言えば終わりなき勉強の旅である。特にテクノロジー業界に勤めていると常に何か新しいことが起きているので、その度に結構な時間を使って勉強しないといけない。クラウドの技術を考えてみても...

MBAのランキングについての一考察

MBA受験を志した方で、MBAのランキングについて全く調べなかった、という人は恐らく皆無であろう。特に偏差値偏重気味の日本の教育を受けてきた人にとって、ランキングが高い≒よい学校≒よい就職先、という構図になりがちなのは否めない。少なくとも僕は受験を始める時はそう思っていたし、実際に留学する時もそう思っていた。でも、MBAを卒業し、かなり長い間アメリカで働いた今は、ちょっと違った考えを持っている。ということで、あくまでもアメリカで "働く" 、という観点を中心に、MBAのランキングについてDemystifyしてみたいと思う。 1.異なる地域の学校のランキングを比べるのはやめよう アメリカというのは基本的に自分の国のことにしか興味がない、という人が多数である(主語が大きいという批判は甘んじて受けたいと思う)。 FT などはグローバルランキングを出しているが、アメリカとヨーロッパやアジアのMBAをランキングで比較して、やれどっちがいいなどと比較するのはやめた方がいい。アメリカだと、MBAホルダーでも、INSEADやLBSといった学校のレベル感がよくわかっていない人はいる(これは実際に留学すると分かると思う-アメリカの学校しか検討していない人多数)。アメリカで就職するのであれば、アメリカのMBAを卒業することを強くお勧めする。これはおそらくヨーロッパでも同じなのではと思う(ヨーロッパで就職するならヨーロッパの学校で)が、興味のある点ではあるので、ご存知の方はコメントで教えて下さい。 2.一般的なキャンパスリクルーティングにMBAランキングだけで差が出ることは余りない 例えば、大手テック企業は、おそらくTop 25くらいまでの学校であれば満遍なくリクルーティングしているはずである。同じ職務経験とスキルレベルだったとして、君はKelloggだから受かるけど君はランキング中位校だから落ちるよ、ということは余りないだろう。寧ろ、学校のランキングよりも職務経験とスキルが問われる世界である。僕自身の就職活動経験を元に考えると、他の事業会社群もおそらく同じような感じだと思われる。投資銀行とコンサルも似たような感じのようだが、ランキングにはもう少し気を使っているかもしれない。この二つの業界の採用の仕方は、僕の観察だと、ポテンシャル採用的な側面がある。従って、日本の新卒採...

グリーンカード狂騒曲

アメリカで就職活動をした方なら絶対に体験しているもの、それはVISAの壁である。これだけで一晩中語り合えると思う。凄いいい会社だ!、などと思って募集要項を見たら、VISAをスポンサーしない旨が書いてあったり、明確に書いていなくても全然留学生をとっていない企業であることを後で知ったり、何度苦汁をなめたかわからない。臥薪嘗胆とはまさにこのことで、そのたびに僕は異常なほど魂を燃やし、こんなものに負けるかと思ってきた。徒手空拳でアメリカで生きる身として、絶対に負けられない戦いだった。VISAのスポンサーをゲットしても、H-1bの抽選、そして永住権までにはPERMのApproval、無駄にひっかかる結核検査、など様々な障害が横たわる。入社直後にこれらを調べた際は、本当に気の遠くなる道のりだと思うとともに、せめて仕事はしっかりして評価されよう、と心に誓ったものであった。 しかし、あの日以来、僕は変わってしまった。そう、グリーンカードを手にした日である。郵便受けを見たら、何の変哲もないプラスチックのカードが入っていた日。まぁグリーンと言えば言えなくもないが、なんとなく全体的にぼやっとしたデザインのカードである。最初は喜びに震えあがり、Welcome to the United Statesを熟読したものの(SSS - Selective Service Systemへの登録が必要と勘違いしてドタバタしたりした)、会社での就労根拠をグリーンカードに切り替えて以降はその出番は殆どなく、数週間後には家のクローゼットの肥やしと化した。もはや海外出張するときくらいにしか出番がない。更新を忘れる可能性すらある(蛇足にはなるが、国籍をどうするか、というのは悩ましい問題である。二重国籍を認めない国の中でも、例えば韓国やインドは、過去に当地の国籍を持っていた人であれば簡単に永住権のようなものを申請することができるため、米国籍に切り替える人が多ようだ。日本にはおそらくこういったシステムはないだろうし、国籍の放棄は重い問題となる)。安心、安寧は人をダメにする。僕は薪に臥して肝を嘗める代わりに、ソファーでポテチをダイエットコーラで流し込みながらダラダラとYouTubeを見る生活に慣れていった。 これではいかん、と今日は思い立ったため、過去のメールなどを遡りながら、時系列で当時のプロセスを振り返り、あの時...

アメリカでフルタイムの就職活動をした話

メールボックスを見ると、Congratulations on you offer、というタイトルのメールが入っていた。やれやれ、またクレジットカードか何かの勧誘か、と思いながら開くと、数日前に最終面接を受けた企業名がまず飛び込んできた。心臓の鼓動が早まる。動揺した頭でメールの冒頭を数回読み直して、Job Offerをもらったことを理解した。ふと空を見上げると、視線の先には綺麗な秋の空が広がっていた。 夏のインターン があまりうまくいかなかったため、二年生の幕開けと同時に、否応なく就職活動を始めることとなった。僕が渡米前に日本でお会いした多くの人が、MBAの二年目は人生で最高の時間だったと言った。カリキュラムも自由度が出るので、自分の興味のある授業が取れるし、就職先も決まっているので最高だ、と。翻って、自由度が出たカリキュラムのおかげで確かに授業は楽しくなったが、就職活動に時間を割く必要がある僕は、一日が24時間では到底足りない状況で、毎日睡眠不足の頭に何らかの形でカフェインを注入していた。それは多くの場合コーヒーという形をとったが、やむを得ない場合については、友人に車で乗せてもらって行ったコストコで大量買いしたモンスターエナジーの使用が許可された。 夏のインターン先の会社選びで失敗した僕は、教訓を活かすべく、自分の中で何が大事なのかを書き出してみた。年俸、ロケーション(アメリカの中でも都市によって雰囲気はかなり違う)、など色々なものが並んだが、いったい何を軸にして就職活動すべきか。順番を並び変えて、優先順位を付けてみたりしたが、なんだかしっくりこない。ふと、大学生の時に瞬間風速的にお付き合いをさせて頂いた女性が言っていたことを思い出した。 「恋人に求めること、三つ挙げてみて」 そう彼女は言った。 「うーん、性格がよいこと、顔がこの好みなこと、足首が華奢なこと」 僕は知能レベルの低さ丸だしな回答をした。 「もう一つ挙げるとすると?」 「そうだなぁ。お酒が好きで強いことかな」 そういうと彼女は笑った。猫みたいにとても愛嬌のある子だった。 「最後に答えたものが、深層心理で一番譲れないものなの。だから、お酒が飲める子じゃないとダメってことね」 そういって彼女は嬉しそうに笑った。彼女は九州出身で、早稲田大学に通っていて、そしてお酒がとても強い子だった。この話をした二か月後く...

MBA中、あるいはその後に読んでよかった本たち

僕のように純粋国産培養の人間がMBAに行くと、読まねばならない英文の量に圧倒されることが多いはずだ。毎日のケースに参考文献。来週までに本一冊読むの!?!?!?、といった参考文献の指定のされ方もあって、度肝を抜かれたのを覚えている。しばらくすると大量の英文を速読することに慣れるとともに、力の抜き方も覚えてくるのだが(この参考文献は読まなくてよさそうだな。。等)、とにかく最初の数か月くらいは常時睡眠不足だった。 MBAに来るまでの長い間、僕は本を読むのがそんなに好きではなかった。重度のドラマ(含む海外ドラマ)オタクだった僕は、暇さえあればDVDを借りてドラマを見ていた(当時は動画配信などない)。また運の悪い(?)ことに、僕はニコニコ動画や黎明期のYouTubeが直撃した世代でもあり、本を買って読むなどという発想は終ぞなかったのである。有難いことに、MBAの初期に半ば強制的に大量の本を読んだことにより、本を読む、という習慣がついたように思う。以降、YouTubeの時間が多少減り、本を読む時間が人生において増えることになった。これもMBAに行ってよかったことの一つかもしれない。 良質のビジネス書を読むことのメリットは、著者の長年の研究の結果が、一冊の本に凝縮されていることである。一流の研究者が数年、長い場合は数十年かけて得られた洞察を数十ドルで買えるのはありがたい話だと思う。ビジネス書は比較的容易な文章で書かれているため、英文を読む練習にもなるかと思い、参考までにMBAの時に読んだものを中心に、自分の中でのお勧めビジネス書トップ5を挙げてみたい。尚、僕の現在の職務で役に立っているもの、という点でのバイアスが若干かかっているであろう点、ご了承願いたい。 1. Built to Last 日本語だとビジョナリーカンパニーという題名で、僕がMBA前に勤めていた会社の上司にもファンが多かった一冊である。天邪鬼な僕は、当然読まなかった。結構偉い上司から三回くらい勧められたので、インターネットであらすじを調べて読んだふりをした。本当にダメな若手で申し訳ない。 内容としては、尊敬され長い間経営陣の交代があったにも関わらず業界のトップにある会社群を調べ、その通底する特徴は何か、という点を解き明かしている。物凄い雑にまとめると、会社のCoreになるカルチャーを醸成し企業そのものを製品やサービ...

アメリカで就職する上で気を付けた方がよいものたち

僕はMBAに来るまで留学の経験もなかったし、海外で生活することすら殆ど考えていなかったため、就職してからも驚きの連続だった。今の会社に入社して後悔はしていないが、この辺りは最低気を付けた方がよいのでは、という点について簡単にまとめておきたい(年俸についてはみんな気にしている部分だと思うので割愛)。 1. 会社が提供する医療保険 有名な話だと思うが、アメリカには国民皆保険制度が存在しない。今のCOVID-19でも医療費をどうするのか、というのが大きな争点になっていたのは記憶に新しいが、これは脆弱な保険制度というのが根っこにあるからだ。この点についての改善を図ったのがAffordable Care Act、通称オバマケアではあるが、格安の保険料で医療費負担が圧倒的に低い日本の国民皆保険制度とは大きな差がある。 医療費及び保険料の高いアメリカでは、雇用先がベネフィットの一環として、従業員向けにディスカウントの効いた医療保険に加入するオプションを提供することが一般的だ。従って、よい会社に入ると、よい保険が会社経由で提供される、という印象があるため、各社、保険をベネフィットの重要な柱として捉えている。MBA卒業後は、家族を持ったり、子供が生まれたり、というライフイベントが続くことが多い年齢だと思うので、会社がよい保険を提供してくれるのか、というのは重要な考慮事項になると思う。 尚、保険選びで個人的に大事だと思っているのは、保険のカバー範囲(何がカバーされて何がカバーされないか)、毎月の保険料、Copay & Coinsurance、そしてDeductibleとOut of Pocket Maximum Payである。Copay & Coinsurance、というのは保険に入っていたとしても自分で支払わねばならない額のことであり(日本でも三割負担ですよね)、Deductibleは自己負担額(Deductibleが年間$1,500だと、$1,500までは全額自己負担になり、$1,500を超えて初めて保険会社が医療費を負担しはじめる。自分はCopayとCoinsurance部分を負担する必要がある)。アメリカの保険は複雑である。 2. グリーンカードスポンサーの可否 僕はグリーンカードを取得したのは少し前なので、今の状況について確たることは言えないのだが、自分の所属...

何故アメリカの就職活動に挑戦したのかという話

日本人同級生が、やれボスキャリでいくつ内定を取ったという景気の良い話をしている中、僕は沈黙を守っていた。夏は某外資系企業の東京オフィスで働く予定だという同級生のヒロに、同じく昨年東京でインターンした先輩が、六本木のナイトスポットについて熱弁を揮っている。同じMBAに在籍する日本人の会合で行った中華料理屋で、浮かれた話には耳を貸さず、僕は真摯にジャージャー麺と向き合っていた。驚くべきことに、それは僕が日本で食べていたジャージャー麺とは全く別物であった。一緒に頼んだチンタオビールがみるみる減っていく。僕がビールのお替りを頼もうと思っていると、一学年上のジュンが隣に座った。先輩とは言え、同じ年で横顔の綺麗な彼女は、人生の大部分をイギリスとアメリカで過ごした帰国子女であり、夏のインターンをしたアメリカの大企業に卒業後も進むことを決めているらしい。 「ここのジャージャー麺美味しいよね」 そういいながら彼女はジャージャー麺を目の前のだれも使っていない小皿に取り分けた。 「美味しい。日本で食べているものとは全く違くない?」 僕がそういうと彼女はにこっと笑った。 「日本の中華は日本人向けにアレンジされているものが多いんじゃない?私は日本の料理がやっぱり世界で一番美味しいと思うな」 そういって彼女はジャージャー麺を上品に食べた。僕は小さく頷く。彼女は小学校から高校までイギリスで過ごし、その後アメリカの大学に進学。卒業後、日本で就職し、MBAを取りにまたアメリカに戻ってきたそうだ。 「ビール飲む?」 ジュンは麺を口に運びながら小さく頷く。僕は丁度こちらに向かってきたサーバーにビールを二つ頼んだ。 「夏のインターン、アメリカでやる予定なんだっけ?」 「まだ決めていないけどね。日本でやらない方向では考えている。シンガポールとか、アジア圏にも興味があるから」 当時、僕は オードリー のおかげでアメリカ就職に本腰を入れ始めてからしばらくたっていた。スケールの大きな話に圧倒され、最先端のイノベーションを追求しつつ、プライベートと仕事のバランスを重視する米国テクノロジー企業へのあこがれは日に日に募っていった。しかしながら、コーヒーチャットやネットワーキングイベントに積極的に参加をするも、全く存在感が示せず、薄ら笑いを浮かべながら相手の話に相槌をうち、撤退を余儀なくされることも多かった。打ちひしがれ...

実際にどうやってSQLとPythonを勉強するかという話

(本稿はMBAに来ていてかつプログラミングの経験がない方を想定している。SQL黒魔術やベイジアンモデリングなどを日々使っている方は生暖かく見守って頂きたい) 何かを学ぶにあたっては、大きく分けて二つの作業が要求される。インプットとアウトプットである。インプットとは知識を学ぶことであり、アウトプットとは知識を使うことだ。インプットした知識をアウトプットし、自分がきちんと理解しているか、また、次に学習すべき課題を見つける、というサイクルを回していくのが、究極的には勉強する、ということだと僕は思っている(GMATやTOEFLでも同じで、延々とインプットばかりしてはだめで、定期的に自分の現在地や、弱み・強みを把握できるような模試やPrepを受ける必要がある)。SQLやPythonに限らず、コンピュータ言語を学ぶ際も、このインプットとアウトプットのバランスが極めて重要になる。コンピュータ言語の勉強においてやっかいなのは、インプット -> アウトプットという学習のループを回す際に、環境依存、というとても大きな変数があることだ。 コンピュータ言語、というのは、日々日々アップデートされ、移り変わっていくものだ。その動機は、コードを走らせた際の効率性であったり、セキュリティに関する脆弱性であったりするが、鴨長明が現代にいたら、世の中にある"人"と"住処"に、間違いなくコンピュータ言語を加えていたであろうくらい、久しくとどまりたるためしがない。従って、自分が書籍などをベースに学んだものが、実際の実務で使えるか、という点には極めて大きな注意を払う必要がある。実際、Pythonが出しているリリースのスケジュールを見ると、とてもアクティブに開発がなされていることがわかる。 https://www.python.org/doc/versions/ といっても、初めてコンピュータ言語を学ぶ諸子にとって、Python 3 対 Python 2 (これはもう決着がついているとは思うが)やOracle SQL 対 PostgreSQLといった論争に入ることにあまり意味はない。結局のところ、これらの環境変数は入社した先の会社のPolicyに大きく依存することになるし、会社毎に極めてローカルなルールを設定しているところだってたくさんある。気にかけておくべきなの...

データ分析とは何かという話

前回の記事では、データ分析をする際にSQLとPythonが如何に扱いやすくかつ有効なスキルか、ということを書いた。より具体的にSQLとPythonの要求水準や学び方に移る前に、私見ではあるが、データ分析とは、という点について述べてみたい。今回はとても短い投稿になるが、少しでもイメージがわけば幸いである。 僕の個人的な経験上、データを分析する、というのはだいたい三つくらいのパターンに分けられる。(1) 仮説検証、(2) 将来予測、そして(3) KPI管理(予実管理)、である。(3)については、(1)の仮説を元に求められた(2)に対して、実際の業績をトラックする、という形になることが多い(というよりそうでないとまずい)。また、今までは(2)の将来予想についてもそれこそエクセルに手入力でドライバーを設定していくことが多かったと思うのだが、これはMachine Learning / Deep LearningなどのよりObjectiveなものに置き換わっていくだろう。人類のトップ1~5%の人が手入力で作った将来予想モデルは、ML/DLで作ったものより優れたパフォーマンスを示すかもしれないが、多くの場合においてML/DLは手作業を凌駕するはずである(僕はML/DL関係の仕事が多いため、多少Biasがかかっているかもしれないが、僕は最早自分の知識をベースにした将来予測の係数は信用できない)。データ分析の肝は(1)の仮説検証、というところに尽きる、というのが私の意見である。 では、仮説検証とは何か。読んで字のごとく、仮説を検証することである。賢明な諸子はお気づきとは思われるが、先ずは仮説を立てる必要がある(個人的に、MBAなどで学ぶフレームワークは、カオスのようなデータを筋道をたてて整理し、仮説を立案するためのものだと思う)。仮説の立案・フレームワークについては、諸先輩方が有難い本を出してくださっているので、そちらに譲るとし、データ分析というとても実務的な観点から、どのような点に注目して仮説立案をするべきか、という点について考えてみたい。 僕が注目することをお勧めするのは、データの外れ値である。外れ値というのは、例えば正規分布を前提にした時に、裾野にあるようなデータポイントだ。そういったセグメントの行動をインタビューなどと組み合わせて分析することで、ビジネスアイデアが生まれてきた...

アメリカ就職で大事なデータ分析スキルの話(その1)

データ分析力、というのは帰国子女などでなく、英語が厳しい日本人留学生にとって、アメリカでの就職戦線で戦うための大きな武器になる(注: 2020年現在)。実際に自分が採用を担当するときも、ポジションがジュニアであればあるほど、こういったデータ分析のためのスキルセットを持っているか、というのが重要になってくる。ネイティブスピーカーのよう会議を上手にしきったり、格式の高い文章を書いたり、ということが難しい日本人留学生にとって、データが扱える、というのは大きな武器になるはずだ。 どの程度のスキルがあればよいのか、という質問をたまに受けるのだが、答えは、"凄ければ凄いに越したことはない"、という当たり前のものになってしまう。航空会社から、同じ値段でどこにでも座ってよい、と言われて、エコノミーを選ぶ人はいないだろう(中にはそういった奇特な諸子もいるかもしれないが、私は大手を振ってファーストクラスにどかっと座るタイプである)。従って、正しい問いは、"書類選考を突破するにあたってレジュメに書いておくべきスキルは何か"、"インタビューを突破するにあたって、最低どれくらいのスキル・実務経験が必要か"、という極めて具体的なものである必要がある。これからこのトピックについて数回に分けて掘り下げたい(気合が続けば)と思うのだが、本稿では一回目として、僕の独断と偏見に拠る、そもそもこのデータ分析スキルとは何ぞや、というところからスタートしたい。以下、少し長くなるので結論からのべると、今からスタートする人はとりあえずSQLとPythonをやるべきだ。 まずデータを分析するにはデータを引っ張ってこなければならない。コンサルや投資銀行出身の諸子におかれては、Due Diligenceの時に出てくるビジネスプランにくっついてくる、整理されていない元データを思いだしてみよう(トラウマがよみがえらないことを祈る)。僕も昔、データルームに上がっていた解読不能なデータ(おそらくPOSデータ)をみてため息をもらし、ストレスのあまりファミチキを爆食いした記憶がある。データの出し直しをお願いしたことがある人も多いはずだ。ここでのよいニュースは、自分でデータをデータベースから引っ張ってくることにより、(1) 何度も他の人にお願いしてデータを出...

アメリカの夏のインターンがイマイチだった話

いつもより少し早起きをして、コーヒーを淹れながら窓の外を見る。日に日に緑が濃くなっているのがわかる。朝食を終え、丁寧に歯磨きをした後、僕は久しぶりに少し伸びた髭を剃り、髪を整え(といっても整えるほどでもないくらい短いのだが)、日本から持ってきたチノパンを取り出し、綺麗にアイロンをかけたシャツを着て出かけた。夏の気配を近くに感じられる気持ちのよい朝だった。インターンの初日としては申し分のないスタートだ。インターンのオファーが出てからは、CPTの承認をとったり、Social Security Numberを申し込んだり(これがないと働けないのだがJob Offerがないと申請すらできないのだ)、授業の最終プロジェクトや試験に追われて、あっという間に一年目が終わってしまった。MBA留学まで一切海外で生活した経験のなかった僕としては、アメリカで働く、という事実自体にとても興奮していたし、とても高い期待を持っていた。 オフィスに入ると大きな部屋に誘導された。そこには、ここからしばらくの間、同僚として過ごすインターンのMBA Candidate達が座っていた。どこに座ろうか一瞬悩んだが、人のよさそうな顔をした若い男を見つけ、彼の隣の席を陣取ることにした。彼はジョンという名前で、MBBのうちの一社で3年ほど働いた後MBAに進学したそうで、そして母親が日本人だった。彼の母親は幼少期をアメリカで過ごしたため英語に全く不自由がなく、家族内の会話は全て英語であり、従ってジョンは殆ど日本語が話せないそうだ。同級生に日本人が結構いるから日本語を少しは勉強しておけばよかったよ、と彼は笑いながら話した。学部時代はコンピューターサイエンスを専攻しており、夏のインターンではなんだか小難しそうなモデルを作るチームに在籍するそうだ。ブラックボックスになっちゃうんだよね、と彼ははにかんだ。このモデルはDeep Learningを利用したテクノロジーだったのだが、それに僕が気づくのはMBAを卒業してだいぶ経ってからのことだ。 歳とバックグラウンドが近く、そして日本人という遺伝的な共通項のある僕たちは直ぐに意気投合した。インターン先の会社のMBA採用担当者によるプレゼンテーションを聞きながら、ジョンは小さな声で、Boring、と呟いた。僕は、One hundred percent、と言った。授業の最終...

アメリカでの夏のインターンを獲得した話

US MBAの就職活動は生徒の数だけドラマがある。一年目の大きな山場は夏のインターンシップ及びそれを獲得するまでの戦いだ。ある同級生はすぱっと夏のインターンを大企業で決めてひたすらパーティーに繰り出しているかと思えば、違う同級生は青い顔をしながら駆けずりまわって夏休みの直前にオファーをもらったりする。日本人を除くと、アメリカでインターンをする人が大多数なので、アイツはどこどこでインターンを決めたらしい、みたいな噂が延々とたつ。協力はしつつも、結局のところ同級生は一番のライバルであったりもする。 僕はこういった周りの目線がある中、選考がうまく進まない自分の状況に焦りつつあった。アメリカでの就職活動が簡単ではないことは知っていたつもりだ。ただ、自分の予想を遥かに超えた難易度だったのだ。自慢ではないが、僕は新卒時の就職活動で苦労したことがない。書類で落ちたこともなければ、面接はほぼ何も準備しなくても殆ど受かった。インターンも順調で、ありがたいことに沢山の企業から内定を頂いた。一転して、アメリカでの就職活動では、そもそも書類選考の段階で半分かそれ以上落ちる。面接では意図が伝わらなくて面接官に困った顔をされることも沢山ある。面接官に苦虫を嚙み潰したような顔をされた日の夜には、なんとかして翌日の面接に行けない理由を探したりしてみた(そんなものは当然ないのだけれども)。同級生と話すのを避けるため、学校のカフェでコーヒーを啜りながら日本からもってきた本(魯山人の食卓や食卓の情景が当時のお気に入りだった)を読む日々が続いた。 アジアからの留学生の大多数を占める中国人やインド人は、同郷の卒業生のネットワークを積極的に使ってネットワーキングをしていた。国が広い彼女たちや彼らにとって、同じ地域出身か否か、というのは大事らしい。XXで働いているYYは上海出身だ、というような詳細な情報をもとにして、次々にコーヒーチャットやらインフォーマルインタビューを設定していた。翻って、アメリカで就職している日本人MBAは本当に少ない。いや、殆どいないと言った方が正しいだろう。かといって、僕の英語力やアメリカ文化の理解力では、普通のアメリカ人のようにネットワーキングをするのは不可能だ。地元のNFLのチームの話にすらついていけない。付け焼刃で勉強はしても、五年前のドラフトの話まで調べようとは思わなかっ...

アメリカ就職エトセトラ

「それで」 オードリーはいつものように、こちらの顔を少しのぞき込みながら、大きな目を見開いて聞いた。 「そのボストンキャリアなんとかには何故いくの?」 ボストンキャリアフォーラムという単語を始めて聞いたのは確か大学四年生になってからだ。内定先の新卒採用担当チームの先輩とランチをした際、海外大学出身で同期になる子たちがいて、どうやらボスキャリなる場所で採用された旨を聞いた。先輩は自慢げに、今年はどこどこ大学出身がいて、などと話をしているが、全く聞いたことのない大学だ。解せぬ顔をしながら黙々と卵スープをすすっている僕を見て、先輩は一言、世界では東大よりずっと上にランクされている大学だ、という旨を付け加えてくれた。後ほどカタカナで大学名を調べ、Ivy Leagueなるものを初めてきちんと理解したのもその時である。 "ボスキャリ"、はその後、もっと身近なものになった。というのも、入社一年目が終わるころ、何故か新卒採用に関わることとなり、海外採用も対応することになったからだ。日々の業務に追われながらの採用活動は正直辛かったものの、おかげさまで色々な人と触れ合うことができ、MBAというものに興味をもつきっかけにもなった。MBA前の壮行会などでも頻繁にこの単語を聞くためか、いつしかボスキャリに行く、というのは当たり前のこととして自分の中に沈殿していった。 MBAプログラムが始まると、しばらくはみな自己紹介で忙しい。太陽の照り付ける中、四六時中握手をし、相手の名前を覚え、そして終始笑顔でいるのだ。僕も下手くそな英語で簡単なキャリアを説明し、半分以上聞き取れていない相手の英語を、しかしとても興味深いといった態度で聞き続けた(僕はこういうのは得意なのだ)。ただ、僕はMBAに、なんとなく楽しそう、そして、一度は海外で生活してみたい、というとてもPrimitiveな理由で来ていたので、キャリア関連の話になると正直困ってしまった。同級生はみな起業やらNGOやらという大きな話をしている。いつしか、日本人向けにはボストンキャリアフォーラムというものがあってとりあえずそこに行く予定だ、という説明を逃げ道として使うようになった。 オードリーはとても綺麗な女性で、確か両親が台湾系の移民のはずなので、彼女自身は二世ということになる。例にもれず、僕は彼女とこの奇...