MBAのランキングについての一考察

MBA受験を志した方で、MBAのランキングについて全く調べなかった、という人は恐らく皆無であろう。特に偏差値偏重気味の日本の教育を受けてきた人にとって、ランキングが高い≒よい学校≒よい就職先、という構図になりがちなのは否めない。少なくとも僕は受験を始める時はそう思っていたし、実際に留学する時もそう思っていた。でも、MBAを卒業し、かなり長い間アメリカで働いた今は、ちょっと違った考えを持っている。ということで、あくまでもアメリカで"働く"、という観点を中心に、MBAのランキングについてDemystifyしてみたいと思う。

1.異なる地域の学校のランキングを比べるのはやめよう
アメリカというのは基本的に自分の国のことにしか興味がない、という人が多数である(主語が大きいという批判は甘んじて受けたいと思う)。FTなどはグローバルランキングを出しているが、アメリカとヨーロッパやアジアのMBAをランキングで比較して、やれどっちがいいなどと比較するのはやめた方がいい。アメリカだと、MBAホルダーでも、INSEADやLBSといった学校のレベル感がよくわかっていない人はいる(これは実際に留学すると分かると思う-アメリカの学校しか検討していない人多数)。アメリカで就職するのであれば、アメリカのMBAを卒業することを強くお勧めする。これはおそらくヨーロッパでも同じなのではと思う(ヨーロッパで就職するならヨーロッパの学校で)が、興味のある点ではあるので、ご存知の方はコメントで教えて下さい。

2.一般的なキャンパスリクルーティングにMBAランキングだけで差が出ることは余りない
例えば、大手テック企業は、おそらくTop 25くらいまでの学校であれば満遍なくリクルーティングしているはずである。同じ職務経験とスキルレベルだったとして、君はKelloggだから受かるけど君はランキング中位校だから落ちるよ、ということは余りないだろう。寧ろ、学校のランキングよりも職務経験とスキルが問われる世界である。僕自身の就職活動経験を元に考えると、他の事業会社群もおそらく同じような感じだと思われる。投資銀行とコンサルも似たような感じのようだが、ランキングにはもう少し気を使っているかもしれない。この二つの業界の採用の仕方は、僕の観察だと、ポテンシャル採用的な側面がある。従って、日本の新卒採用とちょっと似ていて、応募者のポテンシャルを一部学歴で見定めることがあるような気がする。

ただ、一部の業界では大きな差が出る。例えば、みんな大好きPrivate Equity、Hedge FundやVenture Capitalのようなバイサイドだ。これらの業界はMBA生を受け入れる全体数が極めて少ない上に、とてつもない数の応募があるため、Large CapだとHBS、Stanford GSB、Whartonからリファーラル付きのレジュメしか見ない、みたいなところも結構ある(そもそもMBAを取ることに興味がないところもある)。勿論、規模の小さいファンドであればこの三校以外からでも入れるところは沢山あると思うが、KKRとかValue Actとかに入りたいのであれば(純粋な日本人には相当無理筋ではあるが)、とりあえずHBSかStanfordかWhartonに入っておけばよいと思う。こういった一般的なキャンパスリクルーティングを外れた就職活動になる場合、ランキング自体というよりも卒業生のネットワークが大きな意味を持つ(3に続く)。

3.卒業生のネットワークの質には大きなインパクトがある気がする
ランキング上位校、というのはいつの時代もいい学校であったことが多い。実際の就職活動に与えるインパクトはさておき、学校のReputationから、上位校にはおそらく優秀な生徒が集まりやすい。従って、こういったランキング上位の学校の卒業生は各業界で活躍していることが多い。これは就職活動を始める際のネットワーキングで大きなアドバンテージになる。卒業生のネットワークをたどっていけば、多くの企業で働いている卒業生を見つけることができるだろう。こういった卒業生から、業界の動向やインタビュー対策などについて詳しく聞き出すことができるか否か、リファーラルを貰えるか否か、というのは就職活動の成否に大きく影響する。

この観点では、クラスサイズ、という点についても注目すべきだと思う。US News Top 10くらいの学校群を見ると、東海岸・中部のスクールは大規模であり、西海岸のスクールは小規模である。従って、東海岸・中部のスクールの方が、様々な業界に卒業生が在籍している可能性が高く、ネットワークに広がりがあることを意味する。一方で、西海岸のスクールは、スタートアップ・テック、といった特定の業界に卒業生を多く送りこんでおり、また少人数ならではの緊密なネットワーキングの機会がある。善し悪しの話ではないが、自分の志望する業界と併せて出願時によく考えておくべきポイントだと思う。

4.ロケーションの重要度は減っていくのではないか(予想)
MBAのロケーションは重要、というのはよく言われていることである。例えば金融業界に行きたいのであればNYC、テックがよければ西海岸、という具合である。僕は元々こういった言説は、3の卒業生のネットワークをロケーションにすり替えただけなのではないか、と思っていた。実際に、東海岸のスクール出身で西海岸のテック企業に勤めている卒業生だって沢山いるし、西海岸のスクール出身で東海岸のバイサイドでバリバリやっている人だって沢山いる。まぁ僕の考えの是非はともかく、今回のCOVID-19(コロナウイルス)の影響で、おそらく対面での就職活動、というやり方は大きく変わっていくと思う。実際、僕が現在インタビューする場合もすべてバーチャル、社内の候補者とのCoffee Chatもすべてバーチャル、多くの企業がインターンもバーチャルでやっていると聞いている。よってロケーション、というものには余り大きな意味がなくなってくるのでは、というのが僕の予想なのだがどうでしょうか。

尚、日本での就職活動はしたことがないのでわからないのだが、当時話を聞いていた限り、同じような感じなのかなぁ、というイメージである。違った場合は是非教えて下さい(そもそも日本ベースのHedge Fundなどは殆どなさそうだが)。

纏めると、僕はランキング自体には余り意味がないと思っていて、実際に就職、という観点で物事を考えるのであれば、卒業生の進路と自分の希望する業界が重なっているか、そして、卒業生に連絡をしてそれに対してきちんと連絡が返ってくるような雰囲気か、という二点を重視する。各校の出している就職レポートを数年分遡ったり、あとは実際にAdmissionにこういった質問を投げかけてみる、というのは、進学先を選ぶ上で大変参考になると思う。

最終的な進学先の決定は、授業のラインナップ、学校の雰囲気や立地といったものも含めて決めることになると思うのだが、僕が志望校選定時に今一つ分かりずらかった、ランキングと就職の関係について、少しでも参考になれば幸いである。

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