アメリカで就職する上で気を付けた方がよいものたち
僕はMBAに来るまで留学の経験もなかったし、海外で生活することすら殆ど考えていなかったため、就職してからも驚きの連続だった。今の会社に入社して後悔はしていないが、この辺りは最低気を付けた方がよいのでは、という点について簡単にまとめておきたい(年俸についてはみんな気にしている部分だと思うので割愛)。
1. 会社が提供する医療保険
有名な話だと思うが、アメリカには国民皆保険制度が存在しない。今のCOVID-19でも医療費をどうするのか、というのが大きな争点になっていたのは記憶に新しいが、これは脆弱な保険制度というのが根っこにあるからだ。この点についての改善を図ったのがAffordable Care Act、通称オバマケアではあるが、格安の保険料で医療費負担が圧倒的に低い日本の国民皆保険制度とは大きな差がある。
医療費及び保険料の高いアメリカでは、雇用先がベネフィットの一環として、従業員向けにディスカウントの効いた医療保険に加入するオプションを提供することが一般的だ。従って、よい会社に入ると、よい保険が会社経由で提供される、という印象があるため、各社、保険をベネフィットの重要な柱として捉えている。MBA卒業後は、家族を持ったり、子供が生まれたり、というライフイベントが続くことが多い年齢だと思うので、会社がよい保険を提供してくれるのか、というのは重要な考慮事項になると思う。
尚、保険選びで個人的に大事だと思っているのは、保険のカバー範囲(何がカバーされて何がカバーされないか)、毎月の保険料、Copay & Coinsurance、そしてDeductibleとOut of Pocket Maximum Payである。Copay & Coinsurance、というのは保険に入っていたとしても自分で支払わねばならない額のことであり(日本でも三割負担ですよね)、Deductibleは自己負担額(Deductibleが年間$1,500だと、$1,500までは全額自己負担になり、$1,500を超えて初めて保険会社が医療費を負担しはじめる。自分はCopayとCoinsurance部分を負担する必要がある)。アメリカの保険は複雑である。
2. グリーンカードスポンサーの可否
僕はグリーンカードを取得したのは少し前なので、今の状況について確たることは言えないのだが、自分の所属するチームの状況などを見るに、出身国がPriority date = currentであれば、準備を始めてから二年弱でグリーンカードが取得できることが多いようだ。アメリカで外国人として働くには、VISAの問題は避けて通れない。私もOPT -> H-1bといういばらの道(H-1bは毎年一回の抽選でVISAの割当が決まり、これに外れると国外退去になる)を通り、そしてグリーンカードを取得したので、これがどんなにストレスのかかるものかというのは身をもって体験している。
グリーンカードについては、願わくば入社した瞬間から始められるようなオプションが望ましいと思う。僕はただのOPTだったので、H-1bの結果を見てから、グリーンカードの準備をする、という流れだったが、今のMBAがSTEM化している流れを見るに、STEM OPTで入社し、即グリーンカードの準備を始めれば、OPTが三年は有効なので、このH-1bの抽選リスクを取らなくてよいかもしれない。勿論、学生ビザは非移民ビザかつ永住の意思を持たないことが前提なので、事前に雇用先や弁護士と相談しておく必要があるとは思うが、僕の知り合いにもOPTからグリーンカードという道を通った強者がいるので(当時ではかなり珍しかったと思う)是非考慮されるとよいかな、と思う。
3. VISAが外れた際のサポート
これは2と関連するのだが、運悪く、米国での就労許可を取得する策が尽きることがある。米国は移民の国だとよく言われるが、VISAを取得するハードルは極めて高い。僕も個人的に数人、VISAの関係で国外退去を余儀なくされた人たちを知っている(何らかの手段でみなアメリカに戻ってきているが)。
そういった場合にどういう対応をとるのか、というPlan Bについて、雇用先と考え方をすり合わせておく、というのは極めて大事だと思う。テック系の大企業だと、毎年多くの留学生を採用しているので、海外のオフィスに一時的にトランスファーさせるなどといった手法が確立されていることが多いが、留学生の採用に不慣れな場合は、就職先がスタートアップの場合、自分でPlan Bを用意しておく必要があるだろう。
尚、悲しいかな、VISAの話は就職に本当にネガティブな結果をもたらすので、このPlan Bの話し合いに関しては、オファーにサインする前にしない方がよい。オファーにサインするまでは、非米国人で同じ会社に就職した先輩方の話を聞くなどして、情報収集に努めることをお勧めする。
4. 社内での部署移動の容易さ
アメリカの会社では、自分のマネージャーが人事権を持っている。マネージャーが気に入らなければ、貴方の評価はボロボロになるし、逆にマネージャーが気に入れば、貴方には相当の自由が与えられる。貴方の給料を決めるのもマネージャーだし(勿論HRは大枠を決めて、かつ、口をだすが)、貴方のVISAやグリーンカードについての決断を下すのもマネージャーだ。ボスに逆らっているアメリカ人を殆ど見ないのはそのためである(なのでマネージャーとしては面従腹背に極めて敏感になる)。マネージャーが極めて強い権限を持っているが故に、相性が合わない場合は地獄である。こういった場合、とっとと逃げ出すしかない。しかしVISAに弱みをかかえる日本人にとって、転職は簡単なオプションではない。ここで大事になってくるのが社内での異動である。
僕の観測範囲上、社内異動について、アメリカのテック系大手はかなりオープンなポリシーを持っていることが多い。チームによっては、スプリント毎に好きなマネージャーと好きな仕事をしていいよ、なんていう凄まじい方式をとっているところもあると聞く。どんなによい会社でもトンデモマネージャーというのは一定数いるものである。従って、なるべく社内異動のポリシーが柔軟な会社を選び、リスクを低減すべきだ。尚、かなりオーバーな部分はあるが、The Officeはアメリカのオフィスの空気を知るうえでは結構よくできていると個人的には思っている。"You are a gentleman and a scholar!"
5. チャレンジと失敗をよしとする文化
MBAを出たばかりの若者は未だ何物でもなく、卒業後長い時間をかけて、失敗をして成長していくものだと僕は思う。そういったチャレンジをさせてくれる環境か否か、というのは、年俸以上に大きな価値を持ってくる。チャレンジと失敗に寛容な組織で、自分の興味のある分野に時間を使い、そして自分の目標に向かって邁進していく、というのが、ポストMBAのあるべき姿と僕は思っている(僕は、入社して若干Codeが書けることがばれたため、いきなりMLモデルをスクラッチで組むことになり熱を出した。MLの経験は当時なかったので無茶苦茶大変だったが、今となれば良い思い出)。若者の挑戦を面白がる会社はいい会社だし、自分もそういった心意気を忘れない人でいたいと思っている。そもそも、年俸が20%違ったって、自分の人生に極めてMarginalな影響しか与えない。それよりは自分の人生が、自分の価値観に沿ったものであることを重視すべきだと思う。
今、米国MBAを検討しており、まさにVISAのことを調べておりました。STEM取得後の就労ビザでグリーンカード取得も可能性があると初めて知りました。グリーンカードのサポートについてはどのように調べられたのでしょうか?
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