MBAに行くことをお勧めする人という話

僕は日本人、特に今まで留学経験のない人はMBAに是非行った方がよいと思っている。いままでのブログでも、MBAの価値MBAで身につくもの、といったテーマで記事を書いているが、少しでもMBA留学に興味のある諸子の背中を押せれば、という思いが強い。特に、現状のCOVID-19、所謂コロナウイルスが流行し、VISAの状況などが非常に流動的な中では、強い意志を持ってMBA留学及び準備に突き進むことが必要になる。

とはいえ、僕も長い間アメリカで生活し、それなりの数のMBAホルダーと話をする機会もあるため、MBAが決して万人向けではないことは分かっている。マイケル・ポーターが言ったように、戦略とは何をやらないか決めること、なのである。従って、企業戦略論を教える場でもあるMBAは当然すべての人に向けたプログラムではない。僕は個人的に、以下のようなモチベーションを持っていたり、考え方をする人に特に向いていると思っている。

1. 経営判断を下す立場になりたい人
僕はMBAで学べる最大のものは、意思決定の訓練だと思う。各部署の責任者がレポートする対象である経営者や事業責任者は、マーケ、ファイナンス、オペレーション、人事、といった様々な角度から物事を見て、決断する必要がある。一つ一つのテーマはそこまで深堀することを生徒に求めない一方、幅広い分野をカバーするMBAのプログラムは、経営上の課題を包括的な観点から見る練習になる。また、自分の意見をクラス内で発表し、意見を戦わせることにより、実社会で発生するであろうConflictを予見したり、それに対してどういった対応を取るべきか、という点についても学ぶことができる。従って、将来的に経営者やそれに近い立場を目指す人にとって、MBAはとてもよいプログラムだと思う。

2. 起業をしたい人
1と似ているが、起業を目的としている場合は特にお勧めしたいと思う。勿論、世の中には優れた人も多く、MBAなどなくても起業を成功させているパターンも多い。ただ、起業をする、そしてスケールしていく、ということは、自分が経営者として決断を下す場面が増えていく、ということに他ならない。僕の周りでも起業したり、アーリーステージのスタートアップに入る人も多いが、会社の規模が10人、50人、100人、と増えていく中で、必ずといっていいほど経営者としてのチャレンジが訪れている。そういった時に、MBAで幅広い分野の知見を身につけ、バランスのとれた判断ができる、というのは大きな武器になるはずだ。実際、現在アメリカのシリコンバレーのスタートアップは、一定以上の規模になると、MBA卒の獲得に意欲的なところが多い。

3. 長期的な視点で物事を見られる人
短期的に見たときに、MBAを取得する、という決断は合理性に欠けるかもしれない。私費であれば、お給料二年分 + 授業料と生活費、という数千万円のコストをかけることになり、二の足を踏みたくなる気持ちになる。僕も受かって実際に資金計画などを立てているときにはかなりブルーな気分になったし、卒業した時には僕の口座は実際問題としてすっからかんであった。しかしながら、MBAでの経験というのは時間を買ってリスクを取らずに自分の好きなことに注力することだと僕は思っており、そこできちんと学んだり自分の人生設計をして、その後の飛躍に活かせるのであれば、数千万という金額は高すぎることはないと思う。MBA中に起業に失敗しても、卒業後に有名企業に勤めて再起を図れるのだ!この先の人生で、こういった機会が訪れるとは僕には思えないし、空の預金残高を見て悲しくはなれど、後悔は一切なかった。

4. 今まで留学や駐在の経験がない人
留学や駐在経験がある人に勧めないわけではなく、そういった経験がない人に特にお勧め、という話である。僕にとってMBAは人生で初めて海外で生活する経験であった。それまでも海外旅行や海外出張くらいはあったが、海外に住む、というのは全く別次元の経験である。まず信用がない。カタコトの英語を話す変な一外国人として、徒手空拳でもって生活を立ち上げる(銀行口座を開ける、携帯を契約する、クレジットカードを頼み込んで作る)という経験は得難いものであったし、それまで温室育ち気味であった自分を叩き直してくれる経験であった。また、おそらく他のプログラムに比べ、MBAは生徒同士の交流を積極的に促進するようなイベントが多いはずだ。これがMBAはパーティスクールと言われる所以だろうが、こういった環境に身を置くことで、否が応にも異なるバックグラウンドの人と交わり、多様な価値観を身につけることができる。ずっと日本で育ってきた人にとっては得難い経験だと思うし、実際に僕はたくさんの刺激を受けた。

5. 楽観的な人
これはもしかしたら人に拠るのかもしれないが、僕はアメリカ就職といういばらの道を選んだが故、とても精神的に苦しい時期があった。アメリカでの就職を目指さなくたって、英語で苦しんだり、文化の壁で苦しんだり、恋愛がうまくいかなかったり、そういった苦しみや悩みを抱える場面は多いと思う。MBAに来るような人は、それまでピカピカの経歴を歩んでいる人が多く、意外にストレス耐性がなかったりする。そういった人が、苦しみや悩みを真剣に捉えすぎると、せっかくの留学も楽しくなくなってしまう。断言しよう、貴方がMBAプログラムに受かるような人であれば、どんなに苦しい時期があってもそれを乗り越えて卒業できるし、卒業後は無限の可能性が開けている。そういった未来を信じて、前向きに、なんとかなるだろう、という精神で毎日を楽しめることが、異なる文化の中でやっていく秘訣なのではないかと思う。

勿論、これらに当てはまらないからMBAは違う、ということではない。あくまで僕の個人的な意見であるし、例外も沢山あると思う。ただ、もし貴方が上記の一つにでも当てはまるのであれば、MBAを真剣に検討することをお勧めする。短期的にはVISAの件などでアメリカ現地での就職や起業はハードルが上がるだろうが、長い目で見れば必ずやりたいことをかなえるチャンスは来るはずだ。是非、こういった大変な時だからこそ、自分のキャリアプランを長期的に見てほしいと思う。

コメント

このブログの人気の投稿

実際にどうやってSQLとPythonを勉強するかという話

Pythonで遊ぼう!英字新聞の難解度検証

グリーンカード狂騒曲