MBA留学に年齢は関係ないのではという話
学校に拠って多少違うとは思うが、米国MBA、特にトップスクールに進学する学生のボリュームゾーンは20代半ば~後半だと思う。大学を卒業後、数年間投資銀行やコンサルで働いた後か、更にそれらを経てPEなどのバイサイドを経験してMBAに来る、というのは王道パターンであり(かなり前の話なので”だった”が正しいかもしれないが)、僕もこの中の一人であった。一方で、実際に僕がMBAに留学していた当時、アメリカ外からの留学生、特に日本、韓国、インドといった国からの留学生は、20代半ばから30代半ばくらいの人まで結構年齢層が幅広くいた。僕自身、学生時代から社会人まで、これだけ年齢が異なる人たちと、所謂、同じ釜の飯を食う、という経験はなかったので、人生の考え方や所作などとても勉強になったし、自分の将来について考える機会を頂いたりした。
米国MBAに来るにあたっては若い方がよいのか否か、というのは当時からある論争であったし、おそらく今も一定の人の頭を悩ます問題であるに違いない。僕はMBA卒業後の経験や、色々な人のポストMBAのキャリアをみた結果、MBAに年齢は関係ないので、行きたいのであれば何歳でも行くべきである、という論陣を張る立場である。
MBAを卒業して就職すると、所謂、ポストMBAというポジションにつくことになる。コンサルや投資銀行だと、新卒たたき上げの20代の若者がつくポジションである。大手のテックなどでも、いきなりマネージャーとして大きなチームを率いるというよりは(ポジション名はともかく)、最初はIndividual Contributorとして採用されることになるだろう。30を過ぎてこういったポジションに就く意味はあるのか、と問われれば、僕は大いにある、と答えたい。何故なら何かを学ぶにあたって、年齢はあまり大きな意味を持たないからだ。昔は35歳プログラマ限界説、というのが囁かれていたが、周りを見渡せば40を過ぎても現役で活躍しているプログラマは普通にいるし、何かを始めるのに遅すぎる、ということはないと僕は思っている。勿論、歳をとると体力的にきつくなる部分はあるのだが、これは筋トレでカバーできる(というわけで留学中は勉強と同様、いやそれ以上に筋トレに力を入れることをお勧めしたい)。自分の限界を決めるのは自分であり、年齢ではないと思う。
さらに言えば、自分のそれまでの職務経験、というのはうまく使えば全くの無駄にはならない。例えば、僕の知っている中に、30代をおそらく大きく過ぎてからポストMBAとして入社してきた女性がいるのだが(正確な年齢は不明だが、学部卒業年の話をしたところから推測した)、彼女はとんとん拍子に出世し、社内で多くの人間をごぼう抜きにしている。彼女はもともとエンジニアとして働いていたのだが、一念発起してオンラインの大学でビジネスアナリティクスの学位をとってコンサルに転職、その後MBAに入学したという経歴を持っている。今はプロダクトマネジメントのチームを率いているのだが、エンジニア+アナリティクス+コンサル+MBA、というのはプロダクトをやる人間としてはかなり理想に近いバックグラウンドだと思っており、彼女がどんどん結果を出して出世していくのもよく理解できる。このように、一見遠回りに見えても、過去の経験や経歴が活きる場合はよくあるし、MBA卒業後のキャリアの成長曲線は一律ではない、という点は着目すべきポイントだと思う。
最後に、今後平均寿命が延びていき、100歳まで生きる、という社会になった場合、5年や10年の違いは誤差になっていくと僕は思う。よく若い方が感受性も豊かで英語の上達も早い、という旨の発言をされる方がいるが、感受性の瑞々しさは年齢と大して関係がないし、僕がたいして英語が上達していない点を考えると、我々のような純粋国産日本人にとっては20代でアメリカに来ようが30代で来ようが大きな違いはないのではないか、と思う。それよりは、30代を過ぎてもMBAに興味がある、という自分の精神的な若さを信じるべきだ。
僕が今まで見てきた中で唯一よく考えた方がいいなと思うのは、ご家族がいる場合はその意向である。30代だとやはり家族を持たれる方も多く、そしてお子さんがいらっしゃる方も多い。MBAで忙しく楽しい時間を過ごす留学生に比べ、配偶者の方は孤独な立場に置かれることも多い。仕事を休職される人もいるだろうし、英語がそこまで得意ではないかもしれない。そういった中での子育てはとても大変だと思う。アメリカは子供に優しい人が多いし、自然も多いために子育ての環境としてはいいと思うものの、それと実際に現地で慣れない子育てをするというのは全く別の話だ。僕なんかは逆に一時帰国で日本に帰って大変な思いをしたことがある。まずオムツの種類が違うので何を買えばいいのかわからない(繊細肌なのに)。気候が全く違うから子供は不愉快で怒るし、持ってきた服が意味をなさない。僕の配偶者は日本人ではないので、そもそもパッケージに書いてあるものの意味が分からない。ハードモードである。そういった点、家族がいる場合はよく話し合うべきだ。二年間アメリカで子育てをしただけでは、子どもは英語を話せるようにはならないだろう(帰国した僕の知り合い家族を見るに、二年間のアメリカ生活だけだと、近いうちに子どもは英語を忘れてしまう。彼ら、彼女らは学びも早く、そして忘れるのも早いのである)。配偶者のこういった点について思いを巡らし、そして一緒に頑張っていこうと家族として決断できるのでれば、家族と一緒の留学はとても素晴らしいものになるに違いないと僕は思う。
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