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6月, 2020の投稿を表示しています

どうやってMBAの志望校を決めたのかという話

僕は"MBA おすすめ"とGoogleに打ち込んだ。今思えばもう少し考えたキーワードはなかったのかという感じではあるが、僕はMBAの志望校を決めようとしていた。もともとは、周りのMBA経験者にお勧めを聞いて、数校にアプリケーションを出してみよう、というくらいの調子で受験を始めた。しかしながら、初期的なインタビューの段階で、どうやらある程度きちんと調べないとダメそうだ、という結論に達したため、わざわざ薄暗い土曜日の朝に早起きをして、眠い目をこすりながらノートパソコンの前に向かっていた。 事の発端はこうだ。尊敬する会社の先輩に聞いたところ、ハーバードかスタンフォードを勧められた。僕も聞いたことのある名前だ。もっとシニアな人にはケロッグという学校を勧めて頂いた。消費財業界をやっている方なので、最初は冗談だと思ったら、本当にそういう学校があるらしい。後輩のアメリカで学部を卒業したやつにそれとなく聞いてみたら、まぁランキングでTop 10くらいだったらあんまり変わらないんじゃないですか?、というつれない返事だった。"ボスキャリ"の方は確かデュークという名前の大学だった気がする。響きがかっこいい。 こういう風にみんな言うことが違うときは、多くの場合において最初の問題設定が間違っていることが多い。僕はどの学校にいくのがよいのか、というとてつもなく漠然とした問いからスタートしていたのだが、一歩引いて情報をまずは集めることで、正しい問題設定を考えることにしたのだった。 調べていって、僕は驚いた。まず、MITにMBAがあるのをそもそも知らなかったのだ。そういえばMIT出身の人が何名か当社にいると聞いたことがあるが、僕はすっかりエンジニアリングなどを専攻しているのだと思っていた。もしかしたらMITでMBAをとったのかもしれない。いくら海外大学に疎い僕でも、ハーバードとUCLAは知っているし、大学時代の先生方の留学先であった、ケンブリッジ、プリンストンやMIT、スタンフォードなどの大学は知っている。続けて見ていくと、UCLAはランキング中位、という感じで、どうやらプリンストンはMBAがないらしい。ケンブリッジにMBAはあるのかと思って調べていくと、できてまだ日は浅いがあるらしく、なるほどヨーロッパにも結構な数のMBAがあるようである。僕はノートパソコ...

MBAで一番印象に残っている授業の話

「☆$##○*!」 「×>°¥+*〆♪€°°>?」 「$€$°○>\^〒○☆!!」 …僕は渡米して初めてMBAに来たことを後悔した。 兆候はもしかしたらあったのかもしれない。 僕はTOEFLのリスニングは何故か得意で、 アメリカに来てからも授業で大きな問題はなかった。 スタディグループのミーティングも、 聞き取りという観点では全く問題なかった( 僕の他にもう一人留学生がいたが、 彼はアメリカで学部を出ていて英語はとても流暢だった)。 でも何故かパーティやソーシャルな場所では聞き取れなくなること がよくあった。僕は周りが騒々しいからなぁ、などと思いながら、 調子良くビールを胃袋に流し込んで、 そして曖昧な相槌をうっていた。 今考えればまったもって浅はかであった。 この授業では途中でちょっとしたミニプロジェクトがあって、 クラスの数人でチームを組んでそれに挑むことになった。 MBAやアメリカ生活に慣れ始めていた僕はちょっと冒険することにした。自慢ではないが、僕は昔から無駄にチャレンジすることが好きな性格だ。 クラスで余り関わったことのない、 アメリカ人とばかりつるんでいるグループとチームを組んでみようと思いたったのだ。 スポーツマンだったじっちゃんは昔こんなことを言っていた ー 慣れ てきた時に怪我をするもんじゃ、と。しかしながら、 遠くアメリカの空気を吸って高く跳べると思っていた僕は、 この金言を思い返すこともなく、 ノリノリでイケイケなアメリカ人グループに突撃した。 グループの中心メンバーはライアンという、 ニューヨークのブティックの投資銀行出身者だった。 学部はWhartonで代々UPennを卒業しているIvy League一家。とても人当たりはよいのだが、 アメリカ人以外と一緒にいることを殆ど見なかった。 それに陽気なアレックスか加わる。彼はMichigan Rossを学部を出ていて、( 当時はそんな呼び名もなかったが今でいう) GAFAの一社でプロダクトマネージャーをしていた らしい。 笑顔の優しいブランダンはアメリカ人だがUKの大学に通っていた という変わり種で、ライアンとアレックスとは違って、 留学生とも比較的交流があった。 最後にウォルフという超絶イケメンだが全く話さない元コンサルタントが加わる 。どうやらライアンとMBA前から知り合い...

MBAのランキングについての一考察

MBA受験を志した方で、MBAのランキングについて全く調べなかった、という人は恐らく皆無であろう。特に偏差値偏重気味の日本の教育を受けてきた人にとって、ランキングが高い≒よい学校≒よい就職先、という構図になりがちなのは否めない。少なくとも僕は受験を始める時はそう思っていたし、実際に留学する時もそう思っていた。でも、MBAを卒業し、かなり長い間アメリカで働いた今は、ちょっと違った考えを持っている。ということで、あくまでもアメリカで "働く" 、という観点を中心に、MBAのランキングについてDemystifyしてみたいと思う。 1.異なる地域の学校のランキングを比べるのはやめよう アメリカというのは基本的に自分の国のことにしか興味がない、という人が多数である(主語が大きいという批判は甘んじて受けたいと思う)。 FT などはグローバルランキングを出しているが、アメリカとヨーロッパやアジアのMBAをランキングで比較して、やれどっちがいいなどと比較するのはやめた方がいい。アメリカだと、MBAホルダーでも、INSEADやLBSといった学校のレベル感がよくわかっていない人はいる(これは実際に留学すると分かると思う-アメリカの学校しか検討していない人多数)。アメリカで就職するのであれば、アメリカのMBAを卒業することを強くお勧めする。これはおそらくヨーロッパでも同じなのではと思う(ヨーロッパで就職するならヨーロッパの学校で)が、興味のある点ではあるので、ご存知の方はコメントで教えて下さい。 2.一般的なキャンパスリクルーティングにMBAランキングだけで差が出ることは余りない 例えば、大手テック企業は、おそらくTop 25くらいまでの学校であれば満遍なくリクルーティングしているはずである。同じ職務経験とスキルレベルだったとして、君はKelloggだから受かるけど君はランキング中位校だから落ちるよ、ということは余りないだろう。寧ろ、学校のランキングよりも職務経験とスキルが問われる世界である。僕自身の就職活動経験を元に考えると、他の事業会社群もおそらく同じような感じだと思われる。投資銀行とコンサルも似たような感じのようだが、ランキングにはもう少し気を使っているかもしれない。この二つの業界の採用の仕方は、僕の観察だと、ポテンシャル採用的な側面がある。従って、日本の新卒採...

グリーンカード狂騒曲

アメリカで就職活動をした方なら絶対に体験しているもの、それはVISAの壁である。これだけで一晩中語り合えると思う。凄いいい会社だ!、などと思って募集要項を見たら、VISAをスポンサーしない旨が書いてあったり、明確に書いていなくても全然留学生をとっていない企業であることを後で知ったり、何度苦汁をなめたかわからない。臥薪嘗胆とはまさにこのことで、そのたびに僕は異常なほど魂を燃やし、こんなものに負けるかと思ってきた。徒手空拳でアメリカで生きる身として、絶対に負けられない戦いだった。VISAのスポンサーをゲットしても、H-1bの抽選、そして永住権までにはPERMのApproval、無駄にひっかかる結核検査、など様々な障害が横たわる。入社直後にこれらを調べた際は、本当に気の遠くなる道のりだと思うとともに、せめて仕事はしっかりして評価されよう、と心に誓ったものであった。 しかし、あの日以来、僕は変わってしまった。そう、グリーンカードを手にした日である。郵便受けを見たら、何の変哲もないプラスチックのカードが入っていた日。まぁグリーンと言えば言えなくもないが、なんとなく全体的にぼやっとしたデザインのカードである。最初は喜びに震えあがり、Welcome to the United Statesを熟読したものの(SSS - Selective Service Systemへの登録が必要と勘違いしてドタバタしたりした)、会社での就労根拠をグリーンカードに切り替えて以降はその出番は殆どなく、数週間後には家のクローゼットの肥やしと化した。もはや海外出張するときくらいにしか出番がない。更新を忘れる可能性すらある(蛇足にはなるが、国籍をどうするか、というのは悩ましい問題である。二重国籍を認めない国の中でも、例えば韓国やインドは、過去に当地の国籍を持っていた人であれば簡単に永住権のようなものを申請することができるため、米国籍に切り替える人が多ようだ。日本にはおそらくこういったシステムはないだろうし、国籍の放棄は重い問題となる)。安心、安寧は人をダメにする。僕は薪に臥して肝を嘗める代わりに、ソファーでポテチをダイエットコーラで流し込みながらダラダラとYouTubeを見る生活に慣れていった。 これではいかん、と今日は思い立ったため、過去のメールなどを遡りながら、時系列で当時のプロセスを振り返り、あの時...

アメリカでフルタイムの就職活動をした話

メールボックスを見ると、Congratulations on you offer、というタイトルのメールが入っていた。やれやれ、またクレジットカードか何かの勧誘か、と思いながら開くと、数日前に最終面接を受けた企業名がまず飛び込んできた。心臓の鼓動が早まる。動揺した頭でメールの冒頭を数回読み直して、Job Offerをもらったことを理解した。ふと空を見上げると、視線の先には綺麗な秋の空が広がっていた。 夏のインターン があまりうまくいかなかったため、二年生の幕開けと同時に、否応なく就職活動を始めることとなった。僕が渡米前に日本でお会いした多くの人が、MBAの二年目は人生で最高の時間だったと言った。カリキュラムも自由度が出るので、自分の興味のある授業が取れるし、就職先も決まっているので最高だ、と。翻って、自由度が出たカリキュラムのおかげで確かに授業は楽しくなったが、就職活動に時間を割く必要がある僕は、一日が24時間では到底足りない状況で、毎日睡眠不足の頭に何らかの形でカフェインを注入していた。それは多くの場合コーヒーという形をとったが、やむを得ない場合については、友人に車で乗せてもらって行ったコストコで大量買いしたモンスターエナジーの使用が許可された。 夏のインターン先の会社選びで失敗した僕は、教訓を活かすべく、自分の中で何が大事なのかを書き出してみた。年俸、ロケーション(アメリカの中でも都市によって雰囲気はかなり違う)、など色々なものが並んだが、いったい何を軸にして就職活動すべきか。順番を並び変えて、優先順位を付けてみたりしたが、なんだかしっくりこない。ふと、大学生の時に瞬間風速的にお付き合いをさせて頂いた女性が言っていたことを思い出した。 「恋人に求めること、三つ挙げてみて」 そう彼女は言った。 「うーん、性格がよいこと、顔がこの好みなこと、足首が華奢なこと」 僕は知能レベルの低さ丸だしな回答をした。 「もう一つ挙げるとすると?」 「そうだなぁ。お酒が好きで強いことかな」 そういうと彼女は笑った。猫みたいにとても愛嬌のある子だった。 「最後に答えたものが、深層心理で一番譲れないものなの。だから、お酒が飲める子じゃないとダメってことね」 そういって彼女は嬉しそうに笑った。彼女は九州出身で、早稲田大学に通っていて、そしてお酒がとても強い子だった。この話をした二か月後く...

MBA留学に年齢は関係ないのではという話

学校に拠って多少違うとは思うが、米国MBA、特にトップスクールに進学する学生のボリュームゾーンは20代半ば~後半だと思う。大学を卒業後、数年間投資銀行やコンサルで働いた後か、更にそれらを経てPEなどのバイサイドを経験してMBAに来る、というのは王道パターンであり(かなり前の話なので”だった”が正しいかもしれないが)、僕もこの中の一人であった。一方で、実際に僕がMBAに留学していた当時、アメリカ外からの留学生、特に日本、韓国、インドといった国からの留学生は、20代半ばから30代半ばくらいの人まで結構年齢層が幅広くいた。僕自身、学生時代から社会人まで、これだけ年齢が異なる人たちと、所謂、同じ釜の飯を食う、という経験はなかったので、人生の考え方や所作などとても勉強になったし、自分の将来について考える機会を頂いたりした。 米国MBAに来るにあたっては若い方がよいのか否か、というのは当時からある論争であったし、おそらく今も一定の人の頭を悩ます問題であるに違いない。僕はMBA卒業後の経験や、色々な人のポストMBAのキャリアをみた結果、MBAに年齢は関係ないので、行きたいのであれば何歳でも行くべきである、という論陣を張る立場である。  MBAを卒業して就職すると、所謂、ポストMBAというポジションにつくことになる。コンサルや投資銀行だと、新卒たたき上げの20代の若者がつくポジションである。大手のテックなどでも、いきなりマネージャーとして大きなチームを率いるというよりは(ポジション名はともかく)、最初はIndividual Contributorとして採用されることになるだろう。30を過ぎてこういったポジションに就く意味はあるのか、と問われれば、僕は大いにある、と答えたい。何故なら何かを学ぶにあたって、年齢はあまり大きな意味を持たないからだ。昔は35歳プログラマ限界説、というのが囁かれていたが、周りを見渡せば40を過ぎても現役で活躍しているプログラマは普通にいるし、何かを始めるのに遅すぎる、ということはないと僕は思っている。勿論、歳をとると体力的にきつくなる部分はあるのだが、これは筋トレでカバーできる(というわけで留学中は勉強と同様、いやそれ以上に筋トレに力を入れることをお勧めしたい)。自分の限界を決めるのは自分であり、年齢ではないと思う。 さらに言えば、自分のそれまでの職...

MBAに行くことをお勧めする人という話

僕は日本人、特に今まで留学経験のない人はMBAに是非行った方がよいと思っている。いままでのブログでも、 MBAの価値 や MBAで身につくもの 、といったテーマで記事を書いているが、少しでもMBA留学に興味のある諸子の背中を押せれば、という思いが強い。特に、現状のCOVID-19、所謂コロナウイルスが流行し、VISAの状況などが非常に流動的な中では、強い意志を持ってMBA留学及び準備に突き進むことが必要になる。 とはいえ、僕も長い間アメリカで生活し、それなりの数のMBAホルダーと話をする機会もあるため、MBAが決して万人向けではないことは分かっている。マイケル・ポーターが言ったように、戦略とは何をやらないか決めること、なのである。従って、企業戦略論を教える場でもあるMBAは当然すべての人に向けたプログラムではない。僕は個人的に、以下のようなモチベーションを持っていたり、考え方をする人に特に向いていると思っている。 1. 経営判断を下す立場になりたい人 僕はMBAで学べる最大のものは、意思決定の訓練だと思う。各部署の責任者がレポートする対象である経営者や事業責任者は、マーケ、ファイナンス、オペレーション、人事、といった様々な角度から物事を見て、決断する必要がある。一つ一つのテーマはそこまで深堀することを生徒に求めない一方、幅広い分野をカバーするMBAのプログラムは、経営上の課題を包括的な観点から見る練習になる。また、自分の意見をクラス内で発表し、意見を戦わせることにより、実社会で発生するであろうConflictを予見したり、それに対してどういった対応を取るべきか、という点についても学ぶことができる。従って、将来的に経営者やそれに近い立場を目指す人にとって、MBAはとてもよいプログラムだと思う。 2. 起業をしたい人 1と似ているが、起業を目的としている場合は特にお勧めしたいと思う。勿論、世の中には優れた人も多く、MBAなどなくても起業を成功させているパターンも多い。ただ、起業をする、そしてスケールしていく、ということは、自分が経営者として決断を下す場面が増えていく、ということに他ならない。僕の周りでも起業したり、アーリーステージのスタートアップに入る人も多いが、会社の規模が10人、50人、100人、と増えていく中で、必ずといっていいほど経営者としてのチャレンジが訪れて...

MBA中、あるいはその後に読んでよかった本たち

僕のように純粋国産培養の人間がMBAに行くと、読まねばならない英文の量に圧倒されることが多いはずだ。毎日のケースに参考文献。来週までに本一冊読むの!?!?!?、といった参考文献の指定のされ方もあって、度肝を抜かれたのを覚えている。しばらくすると大量の英文を速読することに慣れるとともに、力の抜き方も覚えてくるのだが(この参考文献は読まなくてよさそうだな。。等)、とにかく最初の数か月くらいは常時睡眠不足だった。 MBAに来るまでの長い間、僕は本を読むのがそんなに好きではなかった。重度のドラマ(含む海外ドラマ)オタクだった僕は、暇さえあればDVDを借りてドラマを見ていた(当時は動画配信などない)。また運の悪い(?)ことに、僕はニコニコ動画や黎明期のYouTubeが直撃した世代でもあり、本を買って読むなどという発想は終ぞなかったのである。有難いことに、MBAの初期に半ば強制的に大量の本を読んだことにより、本を読む、という習慣がついたように思う。以降、YouTubeの時間が多少減り、本を読む時間が人生において増えることになった。これもMBAに行ってよかったことの一つかもしれない。 良質のビジネス書を読むことのメリットは、著者の長年の研究の結果が、一冊の本に凝縮されていることである。一流の研究者が数年、長い場合は数十年かけて得られた洞察を数十ドルで買えるのはありがたい話だと思う。ビジネス書は比較的容易な文章で書かれているため、英文を読む練習にもなるかと思い、参考までにMBAの時に読んだものを中心に、自分の中でのお勧めビジネス書トップ5を挙げてみたい。尚、僕の現在の職務で役に立っているもの、という点でのバイアスが若干かかっているであろう点、ご了承願いたい。 1. Built to Last 日本語だとビジョナリーカンパニーという題名で、僕がMBA前に勤めていた会社の上司にもファンが多かった一冊である。天邪鬼な僕は、当然読まなかった。結構偉い上司から三回くらい勧められたので、インターネットであらすじを調べて読んだふりをした。本当にダメな若手で申し訳ない。 内容としては、尊敬され長い間経営陣の交代があったにも関わらず業界のトップにある会社群を調べ、その通底する特徴は何か、という点を解き明かしている。物凄い雑にまとめると、会社のCoreになるカルチャーを醸成し企業そのものを製品やサービ...

結局MBAに行って身に付いたものは何かという話

MBA不人気説が俄かに囁かれだして久しい。実務能力は身につかない、高額すぎる、大人の夏休み等、各方面から批判されることが多いMBAだが、本当のところはどうなのだろうか。卒業後にアメリカで就職し、かなり時間がたった今、少し振り返って考えてみたい。 第一に挙げたいのは、 視野が広がる 、という点である。それまで狭い狭いコミュニティで生きてきた僕としては、生まれて初めてこれだけ多種多様なバックグラウンドの人と出会うことができた。そしてそういった人たちと付き合うことで、”世界は広い”、という当たり前のことを当たり前のこととして理解できるようになり、頭でっかちになることを避けられたように思う。意見が衝突した場合、自分の思い込みや価値観を疑うことから始められるようになった。クラスメイトのボブは白人のナイスガイだったが、彼は確かカミングアウトウィーク(みなが言いにくいことをクラスで発表する週。おそらく多くのMBAであるのではなかろうか)でこんなことを言っていた。 「俺はさ、ずっとすごく貧しい地域で育ったんだ。だから周りは黒人の家族だらけで、白人は俺だけだった。幸い、いじめは殆どなかったけど、黒人の友達ばかりできた。おかげで白人に対して凄い悪いイメージを持っていたし、そのイメージと自分の存在で苦しんだ」 頭では分かっていても、心に去来する思いや感情を変えるのは難しい。しかしそれを知識と意志の力とトレーニングでもって冷静に受け止め、感情や直感に支配されないでいることは可能であると僕は思う。そういったことを教えてくれたのはMBAでの経験だった。 次に挙げたいのは、 視座が高まる 、という点である。留学前の僕は、それなりに人生がうまく行っているタイプの人間だったが、なんとなくこのまま出世を続け、なんとなくお金を手にし、そして早めに引退して海の近くに家を買って引退しよう、というような人生プランを描いていた。従って、MBA受験のエッセイのネタ探しには大変苦労したし、志望校に受かったのもおそらくは会社にいた卒業生の皆様からの熱心な推薦状に拠るものと思われる。僕のような人間は、おそらくMBAでは少数派だ。プログラムが始まってわかったのだが、みな意識が高い。意識が高い系ではなく、本当に高いやつらなのだ。 プロのスポーツ選手として10代と20代の大部分を過ごしたはエレノアは言った。 「 女性アスリー...

アメリカで就職する上で気を付けた方がよいものたち

僕はMBAに来るまで留学の経験もなかったし、海外で生活することすら殆ど考えていなかったため、就職してからも驚きの連続だった。今の会社に入社して後悔はしていないが、この辺りは最低気を付けた方がよいのでは、という点について簡単にまとめておきたい(年俸についてはみんな気にしている部分だと思うので割愛)。 1. 会社が提供する医療保険 有名な話だと思うが、アメリカには国民皆保険制度が存在しない。今のCOVID-19でも医療費をどうするのか、というのが大きな争点になっていたのは記憶に新しいが、これは脆弱な保険制度というのが根っこにあるからだ。この点についての改善を図ったのがAffordable Care Act、通称オバマケアではあるが、格安の保険料で医療費負担が圧倒的に低い日本の国民皆保険制度とは大きな差がある。 医療費及び保険料の高いアメリカでは、雇用先がベネフィットの一環として、従業員向けにディスカウントの効いた医療保険に加入するオプションを提供することが一般的だ。従って、よい会社に入ると、よい保険が会社経由で提供される、という印象があるため、各社、保険をベネフィットの重要な柱として捉えている。MBA卒業後は、家族を持ったり、子供が生まれたり、というライフイベントが続くことが多い年齢だと思うので、会社がよい保険を提供してくれるのか、というのは重要な考慮事項になると思う。 尚、保険選びで個人的に大事だと思っているのは、保険のカバー範囲(何がカバーされて何がカバーされないか)、毎月の保険料、Copay & Coinsurance、そしてDeductibleとOut of Pocket Maximum Payである。Copay & Coinsurance、というのは保険に入っていたとしても自分で支払わねばならない額のことであり(日本でも三割負担ですよね)、Deductibleは自己負担額(Deductibleが年間$1,500だと、$1,500までは全額自己負担になり、$1,500を超えて初めて保険会社が医療費を負担しはじめる。自分はCopayとCoinsurance部分を負担する必要がある)。アメリカの保険は複雑である。 2. グリーンカードスポンサーの可否 僕はグリーンカードを取得したのは少し前なので、今の状況について確たることは言えないのだが、自分の所属...