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今回の一連のVISAに関する騒動に思うこと

アメリカで生活する上で、Visaの話は避けて通れない。あっけなく取れてしまうF Visaを手に意気揚々とアメリカに入国するも、Fでできることの少なさに愕然とする(バイトもできない!)、という経験をした人も多いのではないだろうか。そんなただでさえ不安定なVisaの状況に加えて、最近の大統領令、そしてThe Student and Exchange Visitor Program (SEVP)が発表したオンラインで受講する学生にVisaを発給しないという方針を受けて、心穏やかではない人も多いと思う。 それなりに色々な困難があったアメリカ生活を乗り越えてきている身として、僕がいま何を考えているか、を簡単にまとめてみた。 1.悲しいかな、移民政策は変わりつつあるのではないか 留学生の多くは、非移民Visaでアメリカに入国する。これはアメリカに移民する意思がない、というものである(従って面接ではアメリカに長くいたいと思います、などと口が裂けても言ってはならない)。そこから移民の意思を持つことができるH-1bなどのVisaに切り替わり、そしてグリーンカードに進み、場合によっては米国の国籍を取ることになる。 人道的な意味合いのAsylumを除けば、アメリカの移民政策は一貫していると僕は思っていて、それはアメリカの国益になる人間に対して滞在を認める、というものである。従って、アメリカの大学に学費を払う留学生、アメリカで不足しているスキルを提供できる人材などに対してVisaを発給し、アメリカの国をより豊かにしてもらおうというわけだ。僕もこういった移民政策の結果として、アメリカに現在住み、そして働いている。 ただ、今回のSEVPの方針転換は、こういった従来の方針とは全く異なると僕は思う。F Visaを使っている生徒はアメリカで働けないのだから、雇用を奪うことはない。つまり、オンラインであろうがなかろうが、多くのアメリカ人の生活に影響はないのである。さらに言えば、こういった留学生がアメリカで生活をしなくなる分、アメリカの大学周辺の街で使用されるお金が減ることになる。一部には留学生が減ることで大学に進学できるアメリカ人が増える、という言説があるが、オンラインで授業をする学校を狙い撃ちにしてVisaを発給しないと言っているだけなのだから、Enrollmentに大きな影響が出るとも思えない。 ...

MBA後も勉強は終わらない(むしろ本番である)

MBAを卒業してとても長い時間が経つ。MBA後に産まれた自分の子供を見ていると、あの二年間が本当は夢だったのではないかと思うこともある。自由に時間を使え、好きなことに好きなだけ首を突っ込んで、世界中からきた同級生と議論を戦わせる。いい大人になって、制約条件のない自由な二年間というのは、非常に贅沢な時間だった、と僕は思う。 一方で、MBAを取得する、というのは本当にスタートに過ぎない。僕の経験だと、残念ながらMBAで学んだ”知識”そのものをそのまま適用できる機会というのは余りない。勿論、場面場面で役立つことはある。このマーケティングの施策にはこういった視点が抜けている、ファイナンスから出てきた数字のこの前提がおかしい、自分の製品のストラテジーを学んだフレームワークで考え直してみる ー こういった”疑問をもつきっかけ”はMBAで得た授業で手繰り寄せることができる。しかしながら、MBAを卒業したばかりの若者は、そこから目の前にある問題を自分の力で解決していかねばならない。これはMBAで学ぶ経営判断とは全く別の次元の、極めて実務的な能力が必要になる。 アメリカの採用は、MBA採用も含めて、かなりFunctional Skillを重視する傾向があると僕は思っている。Functional Skill、というのは、そのポジションで活躍するために必要になる具体的なスキルのことで、例えば、プロダクトマネージャーであれば、5年以上に亘るプロダクトマネジメントかソフトウェアエンジニアリングの経験、や、SQLやTableauなどの分析ツールが使えること、や、Machine Learningの知識及び実務での経験、といったものがこれにあたる。採用側としても、MBA生のポテンシャル、及び、将来的に会社でマネジメントポジションとして活躍してくれる期待を持ちつつも、実際問題として入社してからしばらく全く稼働しないような人間を取るわけにいかず、従って、どうしてもこういったFunctional Skillが持っていることを前提に、採用を進めていくことになる。 このFunctional Skill重視の採用が何を意味するのか、と言えば終わりなき勉強の旅である。特にテクノロジー業界に勤めていると常に何か新しいことが起きているので、その度に結構な時間を使って勉強しないといけない。クラウドの技術を考えてみても...

どうやってMBAの志望校を決めたのかという話

僕は"MBA おすすめ"とGoogleに打ち込んだ。今思えばもう少し考えたキーワードはなかったのかという感じではあるが、僕はMBAの志望校を決めようとしていた。もともとは、周りのMBA経験者にお勧めを聞いて、数校にアプリケーションを出してみよう、というくらいの調子で受験を始めた。しかしながら、初期的なインタビューの段階で、どうやらある程度きちんと調べないとダメそうだ、という結論に達したため、わざわざ薄暗い土曜日の朝に早起きをして、眠い目をこすりながらノートパソコンの前に向かっていた。 事の発端はこうだ。尊敬する会社の先輩に聞いたところ、ハーバードかスタンフォードを勧められた。僕も聞いたことのある名前だ。もっとシニアな人にはケロッグという学校を勧めて頂いた。消費財業界をやっている方なので、最初は冗談だと思ったら、本当にそういう学校があるらしい。後輩のアメリカで学部を卒業したやつにそれとなく聞いてみたら、まぁランキングでTop 10くらいだったらあんまり変わらないんじゃないですか?、というつれない返事だった。"ボスキャリ"の方は確かデュークという名前の大学だった気がする。響きがかっこいい。 こういう風にみんな言うことが違うときは、多くの場合において最初の問題設定が間違っていることが多い。僕はどの学校にいくのがよいのか、というとてつもなく漠然とした問いからスタートしていたのだが、一歩引いて情報をまずは集めることで、正しい問題設定を考えることにしたのだった。 調べていって、僕は驚いた。まず、MITにMBAがあるのをそもそも知らなかったのだ。そういえばMIT出身の人が何名か当社にいると聞いたことがあるが、僕はすっかりエンジニアリングなどを専攻しているのだと思っていた。もしかしたらMITでMBAをとったのかもしれない。いくら海外大学に疎い僕でも、ハーバードとUCLAは知っているし、大学時代の先生方の留学先であった、ケンブリッジ、プリンストンやMIT、スタンフォードなどの大学は知っている。続けて見ていくと、UCLAはランキング中位、という感じで、どうやらプリンストンはMBAがないらしい。ケンブリッジにMBAはあるのかと思って調べていくと、できてまだ日は浅いがあるらしく、なるほどヨーロッパにも結構な数のMBAがあるようである。僕はノートパソコ...

MBAで一番印象に残っている授業の話

「☆$##○*!」 「×>°¥+*〆♪€°°>?」 「$€$°○>\^〒○☆!!」 …僕は渡米して初めてMBAに来たことを後悔した。 兆候はもしかしたらあったのかもしれない。 僕はTOEFLのリスニングは何故か得意で、 アメリカに来てからも授業で大きな問題はなかった。 スタディグループのミーティングも、 聞き取りという観点では全く問題なかった( 僕の他にもう一人留学生がいたが、 彼はアメリカで学部を出ていて英語はとても流暢だった)。 でも何故かパーティやソーシャルな場所では聞き取れなくなること がよくあった。僕は周りが騒々しいからなぁ、などと思いながら、 調子良くビールを胃袋に流し込んで、 そして曖昧な相槌をうっていた。 今考えればまったもって浅はかであった。 この授業では途中でちょっとしたミニプロジェクトがあって、 クラスの数人でチームを組んでそれに挑むことになった。 MBAやアメリカ生活に慣れ始めていた僕はちょっと冒険することにした。自慢ではないが、僕は昔から無駄にチャレンジすることが好きな性格だ。 クラスで余り関わったことのない、 アメリカ人とばかりつるんでいるグループとチームを組んでみようと思いたったのだ。 スポーツマンだったじっちゃんは昔こんなことを言っていた ー 慣れ てきた時に怪我をするもんじゃ、と。しかしながら、 遠くアメリカの空気を吸って高く跳べると思っていた僕は、 この金言を思い返すこともなく、 ノリノリでイケイケなアメリカ人グループに突撃した。 グループの中心メンバーはライアンという、 ニューヨークのブティックの投資銀行出身者だった。 学部はWhartonで代々UPennを卒業しているIvy League一家。とても人当たりはよいのだが、 アメリカ人以外と一緒にいることを殆ど見なかった。 それに陽気なアレックスか加わる。彼はMichigan Rossを学部を出ていて、( 当時はそんな呼び名もなかったが今でいう) GAFAの一社でプロダクトマネージャーをしていた らしい。 笑顔の優しいブランダンはアメリカ人だがUKの大学に通っていた という変わり種で、ライアンとアレックスとは違って、 留学生とも比較的交流があった。 最後にウォルフという超絶イケメンだが全く話さない元コンサルタントが加わる 。どうやらライアンとMBA前から知り合い...

MBAのランキングについての一考察

MBA受験を志した方で、MBAのランキングについて全く調べなかった、という人は恐らく皆無であろう。特に偏差値偏重気味の日本の教育を受けてきた人にとって、ランキングが高い≒よい学校≒よい就職先、という構図になりがちなのは否めない。少なくとも僕は受験を始める時はそう思っていたし、実際に留学する時もそう思っていた。でも、MBAを卒業し、かなり長い間アメリカで働いた今は、ちょっと違った考えを持っている。ということで、あくまでもアメリカで "働く" 、という観点を中心に、MBAのランキングについてDemystifyしてみたいと思う。 1.異なる地域の学校のランキングを比べるのはやめよう アメリカというのは基本的に自分の国のことにしか興味がない、という人が多数である(主語が大きいという批判は甘んじて受けたいと思う)。 FT などはグローバルランキングを出しているが、アメリカとヨーロッパやアジアのMBAをランキングで比較して、やれどっちがいいなどと比較するのはやめた方がいい。アメリカだと、MBAホルダーでも、INSEADやLBSといった学校のレベル感がよくわかっていない人はいる(これは実際に留学すると分かると思う-アメリカの学校しか検討していない人多数)。アメリカで就職するのであれば、アメリカのMBAを卒業することを強くお勧めする。これはおそらくヨーロッパでも同じなのではと思う(ヨーロッパで就職するならヨーロッパの学校で)が、興味のある点ではあるので、ご存知の方はコメントで教えて下さい。 2.一般的なキャンパスリクルーティングにMBAランキングだけで差が出ることは余りない 例えば、大手テック企業は、おそらくTop 25くらいまでの学校であれば満遍なくリクルーティングしているはずである。同じ職務経験とスキルレベルだったとして、君はKelloggだから受かるけど君はランキング中位校だから落ちるよ、ということは余りないだろう。寧ろ、学校のランキングよりも職務経験とスキルが問われる世界である。僕自身の就職活動経験を元に考えると、他の事業会社群もおそらく同じような感じだと思われる。投資銀行とコンサルも似たような感じのようだが、ランキングにはもう少し気を使っているかもしれない。この二つの業界の採用の仕方は、僕の観察だと、ポテンシャル採用的な側面がある。従って、日本の新卒採...

グリーンカード狂騒曲

アメリカで就職活動をした方なら絶対に体験しているもの、それはVISAの壁である。これだけで一晩中語り合えると思う。凄いいい会社だ!、などと思って募集要項を見たら、VISAをスポンサーしない旨が書いてあったり、明確に書いていなくても全然留学生をとっていない企業であることを後で知ったり、何度苦汁をなめたかわからない。臥薪嘗胆とはまさにこのことで、そのたびに僕は異常なほど魂を燃やし、こんなものに負けるかと思ってきた。徒手空拳でアメリカで生きる身として、絶対に負けられない戦いだった。VISAのスポンサーをゲットしても、H-1bの抽選、そして永住権までにはPERMのApproval、無駄にひっかかる結核検査、など様々な障害が横たわる。入社直後にこれらを調べた際は、本当に気の遠くなる道のりだと思うとともに、せめて仕事はしっかりして評価されよう、と心に誓ったものであった。 しかし、あの日以来、僕は変わってしまった。そう、グリーンカードを手にした日である。郵便受けを見たら、何の変哲もないプラスチックのカードが入っていた日。まぁグリーンと言えば言えなくもないが、なんとなく全体的にぼやっとしたデザインのカードである。最初は喜びに震えあがり、Welcome to the United Statesを熟読したものの(SSS - Selective Service Systemへの登録が必要と勘違いしてドタバタしたりした)、会社での就労根拠をグリーンカードに切り替えて以降はその出番は殆どなく、数週間後には家のクローゼットの肥やしと化した。もはや海外出張するときくらいにしか出番がない。更新を忘れる可能性すらある(蛇足にはなるが、国籍をどうするか、というのは悩ましい問題である。二重国籍を認めない国の中でも、例えば韓国やインドは、過去に当地の国籍を持っていた人であれば簡単に永住権のようなものを申請することができるため、米国籍に切り替える人が多ようだ。日本にはおそらくこういったシステムはないだろうし、国籍の放棄は重い問題となる)。安心、安寧は人をダメにする。僕は薪に臥して肝を嘗める代わりに、ソファーでポテチをダイエットコーラで流し込みながらダラダラとYouTubeを見る生活に慣れていった。 これではいかん、と今日は思い立ったため、過去のメールなどを遡りながら、時系列で当時のプロセスを振り返り、あの時...

アメリカでフルタイムの就職活動をした話

メールボックスを見ると、Congratulations on you offer、というタイトルのメールが入っていた。やれやれ、またクレジットカードか何かの勧誘か、と思いながら開くと、数日前に最終面接を受けた企業名がまず飛び込んできた。心臓の鼓動が早まる。動揺した頭でメールの冒頭を数回読み直して、Job Offerをもらったことを理解した。ふと空を見上げると、視線の先には綺麗な秋の空が広がっていた。 夏のインターン があまりうまくいかなかったため、二年生の幕開けと同時に、否応なく就職活動を始めることとなった。僕が渡米前に日本でお会いした多くの人が、MBAの二年目は人生で最高の時間だったと言った。カリキュラムも自由度が出るので、自分の興味のある授業が取れるし、就職先も決まっているので最高だ、と。翻って、自由度が出たカリキュラムのおかげで確かに授業は楽しくなったが、就職活動に時間を割く必要がある僕は、一日が24時間では到底足りない状況で、毎日睡眠不足の頭に何らかの形でカフェインを注入していた。それは多くの場合コーヒーという形をとったが、やむを得ない場合については、友人に車で乗せてもらって行ったコストコで大量買いしたモンスターエナジーの使用が許可された。 夏のインターン先の会社選びで失敗した僕は、教訓を活かすべく、自分の中で何が大事なのかを書き出してみた。年俸、ロケーション(アメリカの中でも都市によって雰囲気はかなり違う)、など色々なものが並んだが、いったい何を軸にして就職活動すべきか。順番を並び変えて、優先順位を付けてみたりしたが、なんだかしっくりこない。ふと、大学生の時に瞬間風速的にお付き合いをさせて頂いた女性が言っていたことを思い出した。 「恋人に求めること、三つ挙げてみて」 そう彼女は言った。 「うーん、性格がよいこと、顔がこの好みなこと、足首が華奢なこと」 僕は知能レベルの低さ丸だしな回答をした。 「もう一つ挙げるとすると?」 「そうだなぁ。お酒が好きで強いことかな」 そういうと彼女は笑った。猫みたいにとても愛嬌のある子だった。 「最後に答えたものが、深層心理で一番譲れないものなの。だから、お酒が飲める子じゃないとダメってことね」 そういって彼女は嬉しそうに笑った。彼女は九州出身で、早稲田大学に通っていて、そしてお酒がとても強い子だった。この話をした二か月後く...